ロシアと中国のシベリアの力2(POS2)パイプラインのガス価格交渉が決裂した。両国が示した価格の差は極端に大きい。中国は1000立方メートルあたり50ドルを提示し、ロシアは250ドルを要求したと、韓国の市場解説者メル氏が伝えた。 この数字が重要な理由は、50ドルがロシアのガス輸送原価すら回収できない水準だからだ。ロシアのヤマルガス田から中国までの輸送コストは1000立方メートルあたり約125ドルとされる。中国の提示額は、ロシアがガスを送るコストの半分にも満たない。参考までに、中国は現在稼働中のシベリアの力1パイプラインを通じて1000立方メートルあたり約259ドルを支払っており、ロシアのガスプロムは中国以外の海外顧客には平均420ドルを課している。中国がカタールなどから輸入するLNG(液化天然ガス)の価格は平均370ドル程度だ。これらを踏まえると、ロシアが求めた250ドルは無理な要求ではなく、妥当な中間値に近かった。
メル氏はこの決裂を全く別の対立に結びつける。豆満江(トゥマン川)にかかる鉄橋の話だ。豆満江は中国と北朝鮮の国境を流れ日本海へと通じており、中国は長年この水路を通じて日本海へのアクセスを望んできた。 2026年4月に完成したこの橋が大型船の通行できる形で開通することを望んでいたが、ロシア側の進入路・税関施設の工事が遅れている。北朝鮮は、ロシアが中国を意識してわざと完成を遅らせているのではないかと疑っているという。 メル氏の見立てでは、中国の異例に低いガス価格提示は、この橋の問題への不満を狙った圧力、あるいは報復的なシグナルである可能性がある。ただ、中国の本当の意図を外部から確認する方法はないと慎重に付け加えている。
長期エネルギー契約をめぐる、よくある商業的な強気の駆け引きにすぎない
価格差が純粋な商業的な駆け引きと見るには極端すぎ、豆満江大橋問題への中国の不満のシグナルである可能性がある
利害関係は両者で非対称だ。ロシアの欧州連合(EU)向け輸出は2022年以前の年間約1500億立方メートルから現在は250億立方メートル未満まで減少し、EUは2026年末までにロシア産LNGの輸入を停止し、2027年10月までにロシア産ガス輸入を全面禁止することを確定している。パイプラインガスはLNGと違い、一度敷設すれば他の顧客に簡単に振り向けることができないため、中国はロシアにとってほぼ唯一残された大口買い手となる。一方、中国は多少高くても他所からLNGを買うことができるため、この契約を急いでまとめる必要性は相対的に低い。
Why it matters · ロシアが欧州向け輸出の縮小でパイプラインガスの代替買い手をほとんど持たない状況で協議が決裂したことは、中国が交渉上で異例の優位に立っていることを意味し、世界のガス・LNG価格にも影響しうる。
考えるべき点 · 中国の50ドル提示は単なる商業的な駆け引きか、それとも豆満江大橋問題に絡む政治的シグナルか?