上下どちらにも2倍で動く商品なのに、横ばいの相場でも元本が静かに目減りする構造だと、韓国の市場解説者メル氏が指摘した。2026年5月27日に上場したサムスン電子とSKハイニックスの単一銘柄2倍レバレッジETFを分析したところ、表面上の運用報酬は年0.29%にすぎないが、実際の保有コストを積み上げるとサムスン電子2倍で年14%程度、SKハイニックス2倍で年33%程度にのぼるという。
2倍ETFは、投資家の元本と同額のエクスポージャーを先物などで追加で作る仕組みだ。1000万ウォンを入れると、運用会社がさらに1000万ウォン分のエクスポージャーを積み増し、合計2000万ウォン分を対象銘柄に張る。これで対象銘柄が1%動くたびに2%の損益を返せる。 この追加エクスポージャーはただではない。韓国銀行の基準金利(2.75%)から配当利回りを引き、レバレッジ需要が集中して先物が割高になるときに乗る需給プレミアム0.5〜1.5ポイントを足し、さらに運用報酬0.29%を加える。計算すると、サムスン電子2倍の維持コストは年2%程度、SKハイニックス2倍は年3.5%程度になる。SKハイニックスの方が高いのは配当利回りが低く、差し引ける分が少ないためだ。 もう一つ、さらに大きなコストが残っている。「ボラティリティ・ドラッグ(Volatility Drag)」だ。レバレッジETFは毎日の取引終了後、比率をちょうど2倍に再調整する。問題は下落した翌日に起きる。例えば対象銘柄が100から90へ10%下落し、翌日11.1%上昇して100に戻ったとする。対象銘柄は元本のままだが、2倍商品は100から80へ20%下落した後、22.2%(11.1%の2倍)上昇して97.78で止まる。対象銘柄は横ばいなのに、2倍商品は2.2%目減りしている。
レバレッジETFも対象銘柄が元の水準に戻れば元本も回復する
対象銘柄が上下しただけでも、毎日の再調整によって元本は継続的に目減りする
この目減りはボラティリティが高いほど大きくなる。メル氏は年間のボラティリティ・ドラッグを「年率換算ボラティリティの2乗」で大まかに見積もる。サムスン電子のボラティリティは年35%前後で2乗すると約12%、SKハイニックスは55%まで上がり2乗すると約30%になる。これを基本維持コストに足すと、サムスン電子2倍は年14%、SKハイニックス2倍は年33%が毎年溶けていく計算になる。 分かりやすく言えばカジノと同じ構造だ。カジノで儲かるのは賭ける客ではなく、場を提供し手数料を取るカジノ自身である。レバレッジETFも、運用会社が0.29%の報酬を着実に受け取る一方、長期保有する投資家はボラティリティ・ドラッグによって元本を失うリスクを負う。もっとも、一方向に上昇し続ける相場では複利効果で2倍ETFのリターンが対象銘柄の2倍を超えることもある。メル氏が指摘するのは、方向感のない相場、特にSKハイニックスのように値動きの荒い銘柄では、わずか数日で元本が目に見えて減りうるという点だ。
Why it matters · 表向きの運用報酬は年0.29%だが、ボラティリティ・ドラッグまで含めるとSKハイニックス2倍ETFは年間で元本の約3分の1が消える計算になる。単一銘柄レバレッジ商品を長期保有する前に知っておくべき数字だ。
考えるべき点 · 2倍レバレッジETFは短期売買専用の道具なのか、それとも長期保有もありうるのか?