毎年7月、NYUのバリュエーション教授アスワス・ダモダランは恒例の「カントリーリスク」更新を公開する。2026年版が彼のブログに全文・無料で出た。出発点はこうだ。カントリーリスクはかつて金融教育で後回しにされ、「グローバルに分散すれば消せるもの」程度に教えられてきた。彼はその見方は昔も今も誤りで、いまはより誤りだと言う。企業側では、売上もコストも海外市場から得る比率が増え続け、とりわけ技術企業がそうだ。ゆえに企業の真のリスクは「どこに上場しているか」ではなく「どこで事業をするか」に左右される。投資家側では、海外へ向かった動機は当初は分散だったが、やがて高いリターンを追う狩りになり、手軽な世界分散を可能にしたインデックス・投資信託がそれを増幅した。続けてダモダランは彼の真骨頂を見せる。この国ごとの差を実際にどう測り、何よりバリュエーションにどう織り込むかを整理する。カントリーリスクが高ければ割引率が上がり、同じ期待キャッシュフローでも価値は下がる。読者にとって本稿の価値は、特定銘柄のコールというより長く使える枠組みだ。新興国や地政学リスクにさらされた事業を持つ企業を評価するとき、自分が立つ『国』が支払うべき価格を変えるべきだ。
Why it matters · 企業の適正価値は上場地ではなく事業地に左右される。だからカントリーリスクは割引率の中に組み込むべきだ。
考えるべき点 · 地政学リスクにさらされた企業に投資家はより大きな割引を求めるべきか、それともカントリーリスクはすでに織り込まれているのか?