CPIが過大計上されていると証明できれば、「年金を削ろう」と採決する必要なく支出の伸びを遅らせることができるからだ。
PCEはCPIより平均して0.4%ポイントほど低く出る。
FRBの立場ではCPI2%よりPCE2%のほうがはるかに達成しやすい目標であり、目標を下げることに成功したのだ。
6月の米個人消費支出物価指数が前月より0.1%下がった。 この指数が前月比で下がるのは6年ぶりだ。 前年比では3.7%で、5月の4.1%から下がった。 ガソリンを含むエネルギー財の価格が9.2%下落したことが最も大きく効いた。
6月の物価が0.1%下落、6年ぶりの初の低下 (UPI、2026-07-30)UPIは、エネルギー財の9.2%下落が2022年8月以来の大きさだと伝えている。 一か月で指数をマイナスに振り向けたのは物価全般ではなくエネルギーだった、ということだ。 市場がこの数字に沸いた理由は、二日前のFRB会合にある。 金利は9対3で据え置かれたが、反対票3票は利下げではなく利上げだった。 物価が冷えたというデータは、利上げを主張する側の力を削ぐ。
ここで一つ引っかかる。 ニュースで物価と呼んでいる数字は、たいてい消費者物価指数、CPIだ。 ところがFRBが2%目標を測る物差しはCPIではなく、個人消費支出物価指数、PCEだ。 二つの指数は作り方が違う。 CPIは10万を超える品目を固定した買い物かごに入れ、そのかごの値段を測る。 PCEは人々が実際に何を買ったかに応じて、かごの中身を変え続ける。 牛肉が高くなれば、家庭は鶏肉を多く買う。 固定されたかごはこの移動を追えず、上がった牛肉の値をそのまま指数に乗せる。 消費者が安くなった品に乗り換えるのを捉えられず、物価が実際より高く出るこの現象を代替バイアスと呼ぶ。
1995年の米議会の宿題は財政赤字だった。 連邦支出の半分以上が社会保障年金のような義務的支出で、その引き上げ率と所得税の区分がすべてCPIに連動していた。 連動しているとは、CPIの数字一つが支出と税収を同時に動かすという意味だ。 だからCPIが物価を膨らませているという結論が出れば、計算が変わる。 年金を削ろうと採決しなくても、支出が増える速度を緩められるからだ。 議会が設けた委員会は1996年12月4日に結論を出した。 CPIが物価を年1.1%ポイント過大計上しており、代替バイアスがその最大の部分だという内容だった。
報告書の本文には、この統計がなぜ金の問題だったのかがそのまま書かれている。 CPIが生計費を年1%ポイント膨らませたまま10年が過ぎれば、2006年までに赤字へ約1,350億ドルが積み上がり、それだけで社会保障・医療・国防に次ぐ4番目に大きい連邦プログラムになるという計算だ。 FRBの公式な物差しがCPIからPCEに変わったのは2000年2月だ。
原文はPCEがCPIより平均0.4%ポイント低く出ると見ている。長い期間の平均としては正しいが、今回の6月は逆だった。エネルギー価格が急落し、エネルギーの比重がより大きいCPIの側をより強く押し下げたためだ。食品とエネルギーを除いたコア指標で見ると、差は同じ向きに0.7ポイントまで広がる。今月だけを見れば、FRBが使う数字はより甘いのではなく、より厳しく出た。
2026-07-31取得 · 米労働統計局6月CPI(2026-07-17公表) · 米商務省経済分析局6月PCE(2026-07-30公表)
物差しを替えた効果は、一か月分で確かめられる種類のものではない。 平均が低いことと今月が低いことは別の話で、今月は逆だった。
結局、問いは一つだ。 今回の物価の冷え込みが趨勢の始まりなのか、一か月限りのエネルギー効果なのか。 見分ける地点は原油価格だ。 6月の物価を押し下げたのはイランとの一時的な停戦が生んだ原油安だが、7月に入ってその停戦は崩れ、原油はまた上がっている。 7月の物価でエネルギーが再びプラスに転じれば6月は一か月限りだったことになり、食品とエネルギーを除いたコア物価まで下がり続ければ趨勢と見られる。 物差しを替えた側にも、その変更を求めた側にも、それぞれの計算があった。 FRBは達成しやすい目標を得て、議会は票を失わずに赤字を減らす道を得た。 今、市場が沸いているその数字がどう選ばれた数字なのかは、知って見るほうがよい。
採点待ち8月末に公表される7月PCEで前月比が再びプラスに転じれば一か月限りのエネルギー効果、2か月連続の低下またはコアPCEが3.1%を下回れば趨勢と判定する。