87일
郭明錤 (Ming-Chi Kuo) · 2026-08-10 · 原文: EN

TSMCの在庫87日を作ったのがアップルのチップだという証拠はない

つまり、メモリ供給が逼迫しているのは事実だ。

だが私が把握している限り、TSMCがまず10億ドル分の仕掛品を積み上げ、メモリの到着を待ってからでなければ封止に進めなかった、という劇的な状況はなかった。

郭明錤 (Ming-Chi Kuo) · 2026.08.10 · 英語の原文より翻訳

メモリを確保できず、アップルの2nmプロセッサー10億ドル分が封止を待っているという話が先週流れた。 台湾の半導体アナリスト、郭明錤はこれを事実上否定した。

この主張を最初に出したのは台湾を拠点とする記者ティム・カルパンのニュースレターで、同じ日にデジタイムズが同じ内容を伝えて広まった。 根拠として挙げられたのがTSMCの在庫だった。

在庫が増えたのは事実だ

半導体会社の在庫日数は、いま抱えている在庫が何日分の売上に相当するかを表す。 この数字が大きくなれば、作ったが売れていないものが増えたと読むのが普通だ。

TSMCの在庫日数(2026年第2四半期)87日
前四半期(2026年第1四半期)80日

在庫日数が増えたのは事実だ。ただしTSMCの最高財務責任者はその理由をN2の立ち上げと説明しており、この指標には完成品や原材料、予備部品まで一緒に入るため、アップルのチップだけを切り出して見ることはできない。

TSMC 2026年第2四半期決算(2026-07-16) · 2026-08-10 取得

郭明錤が突いたのがこの点だ。 新しいノードを初めて立ち上げる時に在庫日数が上がるのは今年に限った話ではなく、今年2nmを使う顧客はアップルだけでなくAMDとメディアテックもいる。

封止になぜメモリが要るのか

報道が成り立つには条件が一つ必要になる。 プロセッサーを封止する段階で、メモリがすでにそこにあるという条件だ。 携帯電話向けプロセッサーは古くからDRAMをチップの上に載せて一つの塊にしてきた。 アップルの次世代プロセッサーは、その組み合わせをさらに前の工程に引き上げ、プロセッサーとメモリを同じモジュールにまとめる方式で作られると伝えられた。 そうであれば、メモリがない時に封止が止まりウェハーが積み上がるという図は成り立つ。 ただしこの部分もカルパンの報道から出たもので、アップルやTSMCが確認した内容ではない。

報道の読み方

プロセッサーとメモリが一つのパッケージにまとめられる。メモリがなければ封止が止まりウェハーが積み上がる。

VS
郭明錤の読み方

アップルは確保できるメモリに合わせて3か月前に発注する。TSMCに前もって積んでおく理由がない。

同じ在庫の増加をめぐって、ボトルネックが封止工程にあるのか発注の時点にあるのかで読み方が分かれているのだ。

二人が同じことを言った点

一つだけ、両者は食い違っていない。 郭明錤も、アップルがメモリ不足のために今年のハードウェア出荷計画を減らしたことは自分の調査で確認したと述べている。

同じ報道で挙げられたのはMac Studio、Mac mini、MacBook Airで、9月に出るiPhone 18 Pro系も数量に余裕はないと伝えられている。 メモリメーカーが利益率の高いデータセンター向けを先に埋め、消費者向け機器が後ろに回されたという説明だ。 だから今分かれているのは、メモリが足りないかどうかではなく、その不足がどこで止まっているかだ。 封止工程で詰まっているなら9月の発売数量が直接揺らぎ、発注の段階ですでに絞られていたのなら数量は最初から少なく計画されていたので発売自体は予定通り進む。 TSMCが10月に出す第3四半期の在庫日数が87日を下回れば、今回の増加は新しいノードを立ち上げた跡だったことになり、そのままか、さらに上がれば別の理由が残っているという意味になる。

3行まとめ
  • 郭明錤が、先週広まった滞留説に反論する記事を出した。
  • 滞留説はTSMCの在庫が増えたという事実の上に立っており、筋が通って見えた。
  • しかしTSMCが挙げた増加の理由はN2の立ち上げであり、この指標には完成品と原材料も含まれる。

採点予定採点待ち

指標
TSMCの在庫日数(2026年第3四半期)
現在
2026年第2四半期は87日、前四半期は80日
採点日
2026年10月(第3四半期決算発表)
的中
87日を下回る → 在庫増は新ノードの立ち上げによるものだった
外れ
87日以上にとどまるか、さらに増える → 別の理由が残っている

出典

  1. 原文 郭明錤(ミンチー・クオ)、Medium · 2026-08-10
  2. カルピウム 10億ドルの主張を最初に出したティム・カルパンのニュースレター。有料部分があり公開要約のみ確認 · 2026-08-05
  3. デジタイムズ 同じ主張を同日に伝えた台湾メディアの報道 · 2026-08-06
  4. TSMC決算説明会 2026年第2四半期の在庫日数87日、前四半期比7日増、理由はN2の立ち上げというCFOの説明 · 2026-07-16
  5. マックルーマーズ アップルがメモリ不足で2026年のハードウェア出荷を減らすとの報道。Mac Studio・Mac mini・MacBook AirとiPhone 18 Pro系が挙げられている · 2026-08-10
  6. テックスポット アップルのA20 Proがプロセッサーとメモリを一つのパッケージに収める方式で作られるとの報道。この部分は同じ報道系統から出ており一次資料では確認されていない · 2026-08-06

2026-08-10 取得 · 在庫日数87日と前四半期80日はTSMCの2026年第2四半期決算(2026-07-16)に基づく。10億ドルの主張とパッケージ構造の説明はCulpiumに始まり各媒体が伝えたもので、一次資料では確認されていない