長鑫存儲(CXMT)はサムスン電子・SKハイニックスと同等かそれ以上の価格を譲らなかった。
CXMTが価格の下限を握り、コモディティDRAM価格まで下支えする異例の状況が生まれている。
アップルが中国のCXMT(長鑫存儲)にDRAMの値下げを求めたが、断られた。購買力で交渉を揺さぶるのが常だったアップルが、今回は部品メーカーに押し切られた。CXMTはサムスン電子・SKハイニックスと同等かそれ以上の価格を譲らなかった。 アップルは次期iPhoneなどの製造コストを下げるため、LPDDR5Xなどモバイル向けDRAMをCXMTから調達する交渉を進めていた。安い中国製部品をちらつかせて既存サプライヤーを揺さぶる、アップルが長年使ってきた手口だ。だが今回はその手口が通じなかった。
CXMTがアップルの要求をそのまま拒めた背景には、ファーウェイやシャオミなど中国大手電子メーカーによる受注の先取りがある。米国の半導体制裁が続く中、自国調達を増やしたい中国企業がCXMTのDRAM生産量を長期契約ですでに買い占めていた。厳しい品質認証と値下げを同時に求めるアップルに合わせる理由が、CXMT側にはなくなっていた。
CXMT Says No Thank You to Apple's Demand For A Price Cut, as Huawei And Xiaomi Hand It Rare Leverage (WCCFTECH, 2026-08-05)同時にサムスン電子とSKハイニックスは思わぬ恩恵を受けた。中国企業が低価格DRAMの受け皿になってくれたおかげで、両社は利幅の薄いコモディティDRAMを捌く負担から解放され、HBMのような高付加価値メモリーに生産ラインをより多く振り向けられるようになった。
CXMTが強気を貫ける理由はもっと根本的なところにある。米国の輸出規制で最新のEUV(極端紫外線)露光装置を入手できないCXMTは、旧世代のDUV(深紫外線)装置で同じ回路を何度も重ね焼きする方式を使う。この方式は、同じ量のDRAMを作るのにEUV装置を使う競合より約30%多くウェハー投入が必要になる。
Apple's CXMT Gambit Collapses: DUV Cost Gap Locks In Samsung's Pricing Power (Tech Times, 2026-08-05)工程世代で見るとサムスン・SKハイニックスより5〜6世代遅れているとの見方もある。CXMTが開発中の次世代LPDDR6も毎秒12.8ギガビットで、SKハイニックスが目標とする毎秒14.4ギガビットに届かない。装置の限界がそのまま性能の限界になる構造だ。 この構造が覆すものは一つだ。今の高い価格はCXMTにとって底値であって、天井ではない。これ以上値下げすれば採算が合わなくなる価格なので、アップルが望むほど譲る余地自体がない。値下げで市場を揺さぶる「価格破壊者」の役回りは、そもそもCXMTが選べる選択肢ではなかったわけだ。
アップルは今後も代替調達先というカードを使いにくくなった。CXMTが値を下げないなら、次の交渉相手は結局サムスン電子かSKハイニックスになる。両社が下半期の長期契約交渉で例年より強気の価格を提示できる余地が生まれたということだ。焦点はCXMTのウェハー投入負担がいつまで持つかにある。米国が輸出規制をさらに強めればCXMTのコストはより上がり、サムスン・SKハイニックスの価格決定力はいっそう固まる。逆に中国が自前の露光装置の国産化で成果を出せば、この構図は再び揺らぎうる。
2026-08-06 01:40 UTC 確認、引用数値は各記事掲載時点のもの