MPを黒字にしたのは磁石の販売ではなく、国防総省が埋めた差額だった
国防総省はMPに4億ドルを出資し、すでに筆頭株主になっている。
2035年までMPの主力製品であるNdPr(ネオジム・プラセオジム)のkg当たり価格に110ドルの下限を保証したのだ。
MPの後押しだけでは限界があるため、希土類をまったく使わないナイロンの磁石にも賭けを分散している。
MPマテリアルズが2026年4~6月期に黒字転換した理由は、磁石がよく売れたからではない。市場価格があらかじめ決めた線を下回った分を、米国防総省が現金で埋めたからである。
四半期売上高は1億850万ドル、調整後EBITDAは2,850万ドルだった。 1年前の同じ四半期は1,250万ドルの赤字である。 その差をつくった項目の一つが、価格保証収入1,760万ドルだ。
110ドルという床
国防総省はMPの主力であるNdPr、つまりネオジムとプラセオジムを混ぜて取り出した原料の価格に、2035年までkg当たり110ドルの下限を置いた。 相場がその線を割れば、差額が四半期ごとに現金で届く。 平たく言えば農産物の最低買取価格と同じ仕掛けである。 相場が崩れても、収穫した分は決まった値で受け取れる。 なぜこの仕掛けが要ったのかは、中国が西側の希土類企業を消してきたやり方にある。 採掘原価にも届かない値で押し、相手が店じまいするのを待ち、空いた場所を取ってきた。 床値があると、この手が効かなくなる。
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価格の床はこの順序の最後に出てきた。値段ではなく供給そのものが断たれうると確かめられた後である。
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「100%米国産」に残った一片
ラウンドテーブルでジム・リティンスキー最高経営責任者は、カリフォルニアで掘って精錬しテキサスで作った磁石だと述べた。 ただ、磁石が熱を帯びても磁力を失わないよう支える重希土類のジスプロシウムは、中国産とみられている。 EVの駆動モーターや防衛装備のように熱がかかる場所ほど、この元素が抜けると困る。 日本が先にこの壁に当たった。 2010年の尖閣紛争では手が出なかったが、2026年1月に輸出が止まったときには、ジスプロシウムとテルビウムを使わない磁石の量産ラインとベトナムの工場がすでに用意されていた。
希土類を使わずに磁石を作る側
8月7日にトランプ氏が併せて発表したナイロン・マグネティクスの件は、性格が違う。 鉄と窒素を合わせた窒化鉄で磁石を作る会社であり、どちらの元素もありふれている。
原文はこの1億5,000万ドルを国防総省の資金投入と書いたが、発表そのものを追うと少し性格が異なる。 戦略資本室が出す20年満期の直接融資であり、しかもまだ条件付き約定の段階だ。 MPに入った4億ドルは出資であり、こちらは返す金であるから、国防総省が二社に置いた賭けの性格は同じではない。 ミネソタ州サーテルの工場は年1,500トン規模で、2027年の稼働を目標にしている。 ただしナイロンの磁石が力を出す領域は摂氏200度より下で、EV駆動モーターへの全面適用は業界が3~7年先に置いている。
「10倍でも足りない」の意味
生産能力を10倍にすれば、米国が磁石として買う分はほぼ埋まる。埋まらないのは、すでにモーターや機器の中に入った状態で輸入される、はるかに大きい分である。
レアアース・エクスチェンジズ2025-09-01の分析、2026-08-12閲覧
原文は米国が年4万8,000トンを使うのに1万トンでは足りない、と読んだ。 数字を分けると、不足の性格が変わる。
米国は希土類磁石で自立できるのか:2030年までの需要と供給 (Rare Earth Exchanges、2025-09-01)この分析は、磁石として買う量と、部品の中に入ったまま輸入される量を分けて数える。 前者は1万トン前後で、後者まで足すと4万トン前後になる。 2028年の計画が出そろえば前の枠は埋まり、後ろの枠はそのまま残る。 採掘地点まで証明を求められる需要、とりわけ防衛は前の枠に寄っているので急ぎの火は消えるが、米国が使う磁石すべてを国内で作る話とは距離がある。
9月、習近平がワシントンに来る
見極める点は二つある。 一つはMPの10X工場が2028年に実際に1万トン級の稼働に入るかどうかだ。 もう一つはジスプロシウムである。 日本の深海採掘かグリーンランドの鉱山のどちらかが実際の供給につながれば「100%米国産」から注記が外れ、両方遅れれば、磁石は米国で作るが最も熱い場所に入る元素だけが中国を経由する状態が続く。 2026年9月に予定される習近平氏の訪米は、その間にある。 床値を敷き融資を出して急いでいる理由も、その席に着く前に相手が握る札の値を下げておきたい側に近い。
- 8月7日、ホワイトハウスの鉱業界ラウンドテーブルで、MPマテリアルズの最高経営責任者が100%米国産だというネオジム磁石2枚をトランプ氏に示した。
- 表面だけ見れば、米国が中国抜きで磁石を作り上げた場面である。
- だが、その磁石の高温性能を担うジスプロシウムは依然として中国産であり、MPを赤字から引き上げたのも販売ではなく、国防総省が四半期ごとに埋める差額だった。
採点予定採点待ち
出典
- 原文 メル「米中レアアース戦争の近況」2026-08-12
- 第2四半期決算 MPマテリアルズ2026年第2四半期決算(Investing News掲載)2026-08-11
- ナイロン融資 Mining.com、ナイロン・マグネティクス1億5,000万ドル条件付き融資枠、2026-08-08
- 磁石需給分析 Rare Earth Exchanges、米国の磁石需給見通し、2025-09-01
2026-08-12閲覧。MPの数値は2026年第2四半期発表時点、磁石需要の内訳は2025年9月の分析時点による。
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